0213 後ろ向きのスタート(2019.05.05.

平成から令和になって、何かしら変わったことがあるだろうか?あまりピンとこないまま日々を過ごしているが、そうそう何かあるわけでもあるまい。「ボケボケしていると令和もすぐに終わってしまうのかな」などと不謹慎なことを言うようだが、新天皇は自分より1カ月早く生まれたわけで同い年、定年退職が近いような年齢になって即位したわけだ。令和時代は長いわけがない。この年齢になって新しいことを始めるのは結構厳しいものがあるが、ましてや天皇さんだ。「お気の毒さま」としか言いようがない。

 

有りがた迷惑のような10連休も終わりに近づき、やりたかったことがいろいろあったはずなのに、ちいとも結果を出せていないことに腹立たしさすら覚える。時間をかけないとできない作業が少しだけ片付いたことは嬉しい。マッタクもって些事だが、古い雑誌がビニールのクリアフォルダに貼り付いてしまい、無理に剥がそうとすると破れそうになっていたのも、何とか処置することができた。結局クリアフォルダを雑誌のサイズに合わせて切っただけなのだが、こんなことすら時間がなくてできていなかったわけで、もう少し上手く時間を使わないといけないという反省ばかりが後に残った。

 

古い雑誌というのは、スイング・ジャーナル19607月号で、表紙はエロール・ガーナーと書いてあるがどう見てもオーネット・コールマンである。「ファンキー決算報告書」というサブ・タイトルが付されているが、内容的には実に小さな記事にとどまっている。定価120円という時代の代物であり、捨てるに捨てられない貴重な資料である。自分の生まれた1960年のスイング・ジャーナル(途中までは「スヰング・ジャーナル」)は、当時の状況を知りたくて買い揃えたもので、この手の古雑誌は広告を眺めているだけでもあっという間に時間が過ぎてしまう。この7月号には、ペギー葉山や朝丘雪路などのシンガーによる暑中見舞い広告が掲載されているのも面白い。

 

裏表紙はビクターの広告「古典からモダーンまでジャズはビクター 7月新譜特選LP!」というもので、下段にはビクターの家具調ステレオ「STL-3型」が写真入りで紹介されている。「4点一式現金正価¥47,800」、内訳は2バンド・ラジオ付ステレオ・アンプ¥17,7002スピーカー・バッフル\14,0002ステレオ・プレヤー(原文のまま)\13,500、置台\2,600というもので、安いのか高いのか。恐らくサラリーマン一月分の給料程度はする高額商品だったのではなかろうか。上3分の2を占めるLPの広告では、「ギル・エバンスの芸術」、「アート・ファーマー / アステク組曲」、「カウント・ベイシーの芸術」、「ジャッキー・マクリーンの芸術」、「ソニー・ロリンズの肖像~テナー・マッドネス」などが\1,700で紹介されている。マンデル・ロウ・オールスターズの「TVテーマ・イン・ジャズ」などは\1,000である。

 

特集記事に目を移すと、「世界のジャズ・シーン―中村八大みやげ話」、「ファンキーをたずねて…植草甚一」、「マイルス・デヴィスその作品その肖像…油井正一」、「ソニー・ロリンズ研究―ロリンズのひとりごと―いソノてルヲ」、「ニューポートジャズ祭実況映画「真夏の夜のジャズ」誌上封切」などといった楽しそうなものが並んでいる。表記などの違いで読みにくい部分はあるが、それなりに楽しめる。「海外ジャズ・メン人気投票中間成績」などまるでジャズ・メンをアイドル扱いしているかのようで笑える部分も多いし、「関西ジャズ界の展望」などといったシュールな記事も面白い。

 

「ジャズ・レコード新譜紹介 DISC REVIEWS」は、「今月の問題作」が3枚、「ソウル・トレーン:ジョン・コルトレーンの芸術」「ソニー・ロリンズとコンテンポラリーリーダーズ」「オーネット・コールマンの芸術 ジャズ、来るべきもの」というなかなかいいラインナップである。その他が「モダン・コンボ」「ビッグ・バンド」「スイング」「ディキシーランド」「ヴォーカル」といったジャンル分けがされており、もうそれだけで時代を感じさせる。70年代は一旦ジャンル分けが大括りになるが、80年代以降は再度細分化されていくことを知っているからこその面白さでもあろう。

 

ジャズ喫茶の広告ページの隣には「有名ジャズ喫茶御自慢LP」というページがあって、御自慢の所蔵盤を3枚ずつ紹介している。最も時代を感じさせるのが「読者の交歓室」というページで、住所氏名付きの投稿内容が、「ベースお借りしたし」、「乞文通」、「福井で「ジャズを語る会」開催」、「楽譜お貸し願えませんか」などとなっている。そのページの下段には「ジャズ交換売買案内」というコーナーがあり、楽器やLPの売りたし、買いたしの譲渡希望告知が並んでいる。レコード盤一枚の重みが今とあまりに違っており、呆然としてしまう。自分は70年代初頭からレコードを購入し始めた人間だが、ほんの10年前の状況がこうだったのかと思うと感慨深い。もうかれこれ49年も同じ趣味を貫き通している自分ですら、先輩諸氏の熱量には敵わないと思い知らされることになる。10連休をいいことに、こんなものを眺めながら思い切り後ろ向きのスタートを切った令和という時代、さあアナログ・レコードはどんな運命を辿るのやら。レコード趣味に終りはないと思いたい。

 


   

         
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