0220 ロケットマン(2019.06.23.

トークイベント「It’s Only Music … But Vol.3」が無事終了した。直前に土砂降りになってしまい、大変申し訳ない気分でお客様の入りを待ったが、皆さんお集りいただけた。有り難いことだ。ここに集まってくる皆さんは当然ながら相当の熱量を持って音楽を聴いてこられた方々と思われるが、果たして楽しめていただけたのか、毎度心配になってしまう。自分自身は音楽のない人生など考えられないようなものだが、果たしてこれだけ拘った内容のイベントが楽しめるとしたらどういった聴き方をしてこられたのか気になってしまう。皆さんそれぞれのスタイルで楽しんでいらっしゃる様子を眺めているのはなかなか楽しいもので、「お、ここで〇〇さんが反応したか」と手伝ってくれているスタッフの人間やつれあいと目くばせしたりする。概ねプレイリストは組みあげてあるので、その反応を受けて曲目を変更することは難しいが、昨日は2曲ほどその場で追加することになった。結局その分押してしまい、10分ほど延長させていただいたが、喜んでいただけたことが何よりだ。

 

昨日はエルトン・ジョンに一時間、レオン・ラッセルとドン・ニックスをはじめとしたシェルター・ピープルに一時間、ハードロック創成期の名曲をオーディオ趣味に特化した形でお聞かせすることに30分、音楽祭関連の音源をはじめとして1970年代前半の空気感をはらんでいる曲に30分という構成にしておいた。エルトン・ジョンは8月に公開される映画「ロケットマン」への期待が大きく、ここ23週間、音楽好きの常連さんが皆さん楽しみにしているような口ぶりで話題を振ってくる。こちらも1970年代前半の、あの異常なまでのエルトン・ジョンの売れ方を体験しているので、いくらでも反応できる。実は「ボヘミアン・ラプソディー」よりは期待度大なのである。

 

自分にとって興味を持って接することができるアナログの時代は、大体1990年頃に一旦終了を迎える。CDがリリースされたのが1982年、CDがアナログを凌駕したのが1986年、国内の7インチ・シングル盤生産は1988年にほぼ終了している。拘っているアーティストのみがその後もアナログのリリースを続けるが、データベースを作って漁盤活動の参考にしているのは、80年代末までなのである。エルトン・ジョンは1990年頃までに100曲ほどのシングルをリリースしている。大ヒット曲は1970年代前半、73年から75年頃に集中しているが、80年代に入ってもナンバー・ワン・ヒットがないわけではないところがこの人の凄いところだ。「ニキータ」や「サッド・ソングス」などは70年代のヒット曲に負けていないクオリティの曲だと思うし、「ブルースはお好き?」も忘れられない名曲だ。それでも100曲ほどのうち、タイトルを見てパッとメロディが浮かぶものは50曲にも満たない。30曲ほどは誰もが知っている有名曲なので、50曲のメロディが浮かぶ人間は相当のファンだろう。

 

さて、自分がエルトン・ジョンを素材にイベントをやるとなると、どうしても気になるのがニック・ドレイクとの関係だ。エルトン・ジョンはヒット曲が出る前に、スーパーマーケットなどで安く売られることを前提としたカバー・レコードを作っており、その中にニック・ドレイクの曲がいくつかあるのである。大名曲「Day Is Done」は大幅なアレンジが加えられており、全くの別物になっている。問題は「Way To Blue」と「Time Has Told Me」の2曲で、これが素晴らしいカヴァーなのである。原曲はアコースティック・ギターと地味なヴォーカルだが、これを見事にピアノ曲に改作しており、しかもどこを切り取ってもエルトン・ジョンの曲に聞こえるのである。さらにヴォーカルの合間に聴かれるピアノのフレーズが、後の大ヒット・バラードの原型のような佇まいで聴かれるのである。この素晴らしい2曲のカヴァーは何としても入手して聴く価値があると思う。

 

エルトン・ジョンはやはりシングルの人というイメージが強い。アルバムを通して聴きたいと思うものが無いわけではないが、やはり一曲のシングルの中で完結する見事なまでの構成力が魅力なのではなかろうか。そのことが分かっていて、自分はトークイベントで一時間エルトン・ジョンを取り上げ、シングル・ヒットは「君の歌は僕の歌」と「ロケットマン」の2曲しかかけなかったのである。正直言ってヒット曲をまとめて聴けると思って参加されたお客さまにとっては迷惑な内容だったかもしれない。それでも映画「ロケットマン」への期待は高められただろう。

 

イベントの最中、かけている曲のスリーヴやジャケットをまわし見するのだが、昨日は繰り返し「安過ぎる」というお声をいただいてしまった。中古盤市場でエルトン・ジョンは豊富に流通しており、それなりの値札が付けられて売られているのは「君の歌は僕の歌」と「ビッチ・イズ・バック」のみである。今後は「ロケットマン」もここに加わるのかもしれないが、全体的に入手困難になっていくのだろうか?「今のうちに値札を付け替えておくべきだ」という有り難いご意見は承っておくが、のんびり構えてはいられない。映画が公開される前に何とかせねば。

 

 


   

         
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