0232 パラレル・ワールド(2019.09.15.

8月はお休みをいただいた土曜夜のトークイベントだったが、9月はとんでもないバタバタの中で開催する羽目になった。毎度同じようなことを書いている気もするが、さすがに母親の葬式となると別格のバタバタだ。おまけに時期を同じくして台風が関東を直撃したことがカフェの運営のいろいろなところに影響してしまい、もう呆れてしまう状況だったのだ。直接の被害がないだけ助かったが、やはり被災して「まだ自宅が停電している」というお客様もいらして、何とも沈痛な気分の一週間を過ごした。

 

水曜夜も1988年のイベントだったが、こちらは以前にやったことの繰り返しでもあり、資料作成も問題ない。ただお客様が来れるかが問題というだけだった。それなりに席が埋まった状態で開催できたことは本当に有り難かった。しかし、土曜日は久々の開催でもあり、十分に告知することもできなかったので、ヒヤヒヤものだった。前日まではお一人のみのご予約で、さすがにまずいなとは思ったが、当日蓋を開けてみると、常連さんを含め7名様ほどのご参加で開催することができた。こちらも有り難かったが、さすがに新規の内容のイベントは資料作成などする余裕もなく、思い切り準備不足の中開催することになってしまったのだ。結局イベント直前にプレイリストを作り、レコードを並べるまでが限界で、我がトークイベント初の「資料なし」での開催となってしまった。

 

7inch de 70s Rock」と銘打って新シリーズ再開の肩慣らし的なものとしていただけに、準備不足でも何とかなったということでもあるが、その一方で7インチ盤限定というイベントにしてしまったが故の制約も出てきてしまった。つまり「盤が見つけられないのでLPでゴメンナサイ」という言い訳が通用しないのである。7インチ盤専門店がプロモーションも兼ねてやっている、という意味合いも持つイベントである。そこは頑張らないわけにはいかない。幸い「70s Rock」と謳っておいて70年代中盤を中心にかけるいう非常にユルいしばりにしておいたので、プレイリストの変更はし易い。実際、ボブ・ディランの「ハリケーン」をかけるつもりだったが、当日見つけられず、その代わりにブルース・スプリングスティーンの「暗闇へ突走れ Prove It All Night」をかけるという強引な変更が一件あったが、それ以外は何とか予定通りかけられた。

 

7インチ盤のみという制約は意外に厳しい。「70s Rock」と言った場合、ハードロック中心となるのは当然だろうが、プログレッシヴ・ロックも外せない。グラム・ロックやパンク・ロックも視野に入れなければいけない。しかし、この辺のものはシングル盤とは馴染みが薄い。ほとんど見たことないに近いのだ。勿論グラム・ロックはT.Rexやデヴィッド・ボウイのシングル盤は数多く存在するが、それなりに高値で取引されているし、盤の状態もよろしくない。パンクはもうお目にかかる機会も少ない。美品となるとなおさらだ。プログレとなると、シングル・カットそのものが非常に少ない。それでも強引にピンク・フロイド「吹けよ風、呼べよ嵐 One Of These Days」やELP「庶民のファンファーレ Fanfare For The Common Man」をかけてみた。「庶民のファンファーレ」は9分近い曲を3分弱に編集してしまった強引なシングルである。この辺は7インチ盤を語る上で、むしろ話題を提供してくれる定番ネタでもあるので頼もしい。そして、嬉しいことにいい音で鳴る。

 

そもそも7インチ盤でロックを聴くということが難しいのだ。70年代当時の記憶では、まず7インチ盤を買うということが想定できない。自分自身で言うと本当に限られたシングル曲だけをリアルタイムで購入している。ロックという音楽はLPで聴くものだった。余程の好き者でもない限り、シングル盤でロックを聴くということはなかったように思う。唯一猛烈なファンだけはLPと同時にシングル盤も購入していたのではなかろうか。加えて、大ヒット・アルバムからのシングル・カットに関して、1曲目、2曲目は非常の多くプレスされていたが、3曲目、4曲目となると極限られた枚数しかプレスされなかったのではなかろうか。中古盤市場に出回っている玉数の差が歴然と見てとれるのである。

 

そんな状況でも、一部の曲は、LPとは別のテイクが収録されていたり、B面にライヴなどの貴重な音源が収録されていたりと、気になるものではあった。自分の場合、LPよりいい音で鳴るということが知れてからは、好きな曲のシングルを見つけたら買うようにしていたのである。如何せんCDに切り替わる頃は、一枚50円や35枚で100円などといった値段で売られていたのだ。自分の場合、まるでパラレル・ワールドに迷い込んだかのような感覚で、シングル盤を買い集めたというわけである。似たようなミュージシャンのものが並んでいるのに、微妙に違っているのだ。LPでは人気盤が並んでいるミュージシャンでも、7インチ盤では極限られたタイトルしか見かけない。その違いがまた楽しいのだ。ただし、ビートルズとローリング・ストーンズは、例外的にどちらの世界でも豊富な玉数を誇っていることが面白い。

 

さて、来月も土曜の夜のイベントは7インチ盤縛りでトライすることにしてみた。時期を少しずらし、「7inch de Around 1980」とする。概ね1978年から1982年頃のものに限定し、7インチ盤でお聞かせする。単にアナログで古いロックをというのとも微妙に違ったパラレル・ワールド的イベント、ぜひお楽しみ頂きたい。

 


   

         
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