0234 継続こそ力なり(2019.09.29.

久々にライヴを観てきた。日本を代表するガールズ・ロック・バンドの老舗、SHOW-YAである。しかもご招待である。六本木EXシアターというハコも気になったし、珍しく自分が経営するカフェの定休日である日曜日の夕方ということで、お誘いいただいたことにお断りする理由がない。強いて言えば体調だが、そんなことは言ってられない。消費税増税直前、あわせて価格改定も予定しており、メニューは全て書き換えなければいけないというタイミングで、しばらくは激務になること必至の中、どのみち全国の経営者が睡眠時間を削ってでも対応しなければいけない嬉しくない法改正だ。もう勢いでこなすしかない。結果的には行っておいてよかったという大満足のライヴだった。お誘いいただいたTさん、Nさんには大感謝である。ただ自分自身の不注意と油断でその後しばらくは周囲に迷惑をかけることになってしまったが、そんなことも吹っ飛ぶ満足度だったのである。

 

要は、週末の六本木をなめていた自分が悪いのだ。お約束の時間に間に合うよう出かけたつもりが、地上に出るまで思っていた以上に時間がかかってしまい、さらに人混みが凄く、なかなか思った速度で歩けないという状況で、慌てて駆け付けたがために久々の動悸不順を引き起こしてしまったのだ。翌日は特に酷く、増税対応の作業も休み休みこなしたが、PCの不調とも相俟って猛烈なことになってしまった。いつまで続けられるかというようなことばかり考えながら店舗経営をしているわりに、無理しまくりのおバカな経営者は長生きできないだろう。そうは言いつつ、世の中の憚り者は周囲に迷惑をかけまくりながら案外長生きするとも言われている。まあ、なるようにしかならない。ポジティブに生きている以外に選択肢はないと考えている。

 

SHOW-YAのライヴも、キャプテンと呼ばれているキーボーダーが前々日に還暦到達ということで、自虐的な年齢に関するMCが多かったが、そんなことは微塵も気にする必要はない。そもそもバンドが35年近くも継続していることだけで尊敬すべき存在である。しかも、みたところ、さほど演奏スタイルを変えてきているとは思われなかった。つまり手数を減らして無難にこなすようなものではなく、バリバリ現役感を見せつけるような演奏だったのだ。逆手に考えれば、この年齢でここまでできているのだから、あと数年はこのままでもいいだろう。しかし当然ながら限界は必ずやってくる。そのときに、初めて手数を減らし、タイトなリズムを維持しながら音の重心を下げるように工夫をすれば、あと10年以上は続けられる。その余白を十分に持っていることに驚いた。

 

以前、ディープ・パープルのライヴ・レポートを書いたときにも同じような感想を持った。ただし彼等はすでに手数を減らし、重心を下げた音作りを実践したライヴで十分に楽しませてくれたのである。イアン・ペイスのドラミングは元々手数の多さが際立っていたが、ここにきて手数は減らしたものの、実にキレのよいタイトな演奏スタイルに切り替えていたのだ。老練なツワモノどもはさすがによく心得ており、キメのフレーズは見事にキメる。そこがしっかりして揺らぎないものだから、実にタイトな演奏に感じられる。自分は元々高速フレーズにさほど興味がないので、むしろ以前よりも好感度が増した印象で、終演後も興奮して楽しめたことを語っていたように記憶している。ヴォーカルだって高音は限界がくるはずだ。そのときは、上手さで魅了すればよい。長寿バンドは長寿バンドなりの楽しみ方があっていいと思うし、その可能性を考えれば、現在のSHOW-YAはまだまだいけると思わせるものだったというわけだ。

 

自分が経営するカフェもあっという間に4年半が過ぎ、何とか持ちこたえている。この間、ランチ屋として人気が出たもので、ランチの価格改定はずっと見送ってきた。勿論それは毎日のようにいらしてくれる常連さんに対する恩返しでもあると思っていたからだ。しかし、続けられなければ意味がない。ここにきて初めてランチの価格改定に踏み切ったのも、今後も続けていくからには少しでも収支を改善させなければいけないと思ったからである。何事も長く続けるということは、それなりの苦しみも伴う。思いつきやまぐれでの成功とは違う、継続によってもたらされる価値観は、特別なものなのだ。その価値観を理解し、分かち合える人間が、単なる結果重視の薄っぺらな経済社会に飲み込まれることなく、本当の価値をシェアして行けるのだ。またその価値をシェアするに値する存在となるのだ。

 

SHOW-YAのライヴ、正直なかなか見ごたえのあるものだった。自分もどちらかというと継続することに価値を見出すタイプの人間だけに、終盤には涙腺が緩みそうになってしまった。いやはや、やはり音楽はいいものだ。悩み山積経営者の鬱屈とした日々も意外な形でサポートが入ったような気分である。体調ばかりはしょうがない。自分自身と相談しながら、継続する方策を考えるしかない。さて、この下町音楽夜話も「続」になって234本目、通算で900本目になる。目標の1000本が見えてきたぞ!!継続こそが力なり、どうぞ今後ともよろしくお願いいたします。

 


   

         
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