0235 裏話(2019.10.11.

最近立て続けに意外なことがあった。カフェにご来店くださったお客様から、「最近下町音楽夜話のアップが不規則になってますね。」とか「下町音楽夜話、シンドそうですね。」とお声がけいただいたのだ。「おや、読んでくださっているんですね。」と返すと、「よく書けるものだ」とか「何のために書くのか?」といったことを立て続けに問われる。「文章を書くことが好きだから」「店のプロモーションにもなるし…」などということで済む場合もあるし、もっと突っ込んだことを訊かれることもある。そろそろ、一度整理して背景を書いておく必要がありそうだ。とにかく、ここ数カ月、アップロードのペースが乱れているのは、他でもない自分の体調不良、PCが絶不調で買い換えに至ったこと、母親が他界したことなど、いろいろなことが重なっているためである。店のスタッフが何人か入れ替わり、バタバタしていることも大きな原因の一つだろう。春から夏にかけて、3時間睡眠の日も多かったほど、店の作業に時間をとられているからだ。その合間のちょっとした休憩時間などに書いているものなので、ご理解いただければと思う。

 

そもそも一個人としては、「ただの本好きかつレコード好き」と思っているが、実に大量の文章を発信しているし、カフェを作ればそれなりに好き者が集まってくる、そこそこ人気のお店となっている。この文章に触れた方がカフェを訪れてくれるというのは理想だが、なかなかそこまでには至らない。ただ、清澄白河のCafé GINGER.TOKYOはポークジンジャーが人気のランチ屋さんという、オーナーが意図したわけではない性格を持った店を運営していることもあって、やはりGINGER.TOKYOは自分の最大のアウトプットということになろう。

 

そもそも、東日本大震災の際に激務が続き、体を壊したため地元の江東区役所を退職したことが直接のきっかけと言えようか。深川界隈でカフェをやりたいなと思うようになったのはその10年ほど前からなので、体を壊したことは単なるトリガーに過ぎないかもしれない。全てにおいていろいろな理由が絡み合っているのである。なかなか簡単に説明できるものではない。29年間の役所勤めを終えて実際に退職してみたら、54歳で意外にまだ動ける自分がおり、4カ月でまずは会社を設立し、10カ月でカフェのオープンまでこぎ着けた。その間、ご近所にブルーボトル・コーヒーなる日本初上陸のお店ができるということが知れ、何とか先にオープンしろなどということになって、ブルーボトルのオープン前日、みぞれ交じりの日に無理やり間に合わせてオープンしたのである。

 

当初の計画では自分自身がべったり店にいるつもりもなかったし、アナログ・レコードを持ち込む計画もなかった。計画を具体化する中で、少しでも強みを持たせるべきということになって、レコードをウリの一つに掲げることにしたのだ。現状は計画とは全然別物なのである。お店の性格はお客様が作り上げるということが言われるが、まさにその通り、いろいろ試してみて人気メニューだけを残したのが現在のメニューであり、ランチ中心の店という部分もお客様の需要がそこに集中しただけなのである。ただ具体的な目的意識もなくレコードを買い集めていたこともあり、自宅のレコードラックから溢れていたものだけでも相当の枚数だったため、アナログ・レコードがウリの店を一つ作るくらいは余裕だった。結果的に総数の3分の1程度を店で鳴らす専用にし、イベントなどで使うものは都度持ち込むようにしたのである。

 

そもそも、スタバでもそこらのコンビニでもジャズが流れているような現状もあり、ジャズ喫茶ではないという部分には拘った。ジャズ喫茶をやるほどジャズのアナログ盤は持ってないし、古いロックならそこらの老舗にも負けないコレクションがある。それほど時間を経ることなく、雑誌やらマスメディアなどでも取り上げられるようになったというわけだ。個人のコレクションなので、レコードの状態は頗るよい。一方で7インチ・シングルも押し入れの中に埋もれていたので、こちらは売ることにしてみた。カフェのオープンから1年後に7インチ盤専門店をショップ・イン・ショップで始め、そのタイミングで古物商の免許もいただいた。数カ月遅れて一箱古本市の常設版のような本屋も始めてみた。その結果が現在のCafé GINGER.TOKYOの姿なのである。

 

循環器系疾患あるあるなのかもしれないが、2度ほど倒れて救急搬送された時の影響もあるのか、直近の記憶がひどく曖昧で、実は役所勤めの最後の数年間の記憶はズタボロである。しかしその一方で、昔の記憶が妙にしっかり残っている。そんなわけで、常連のお客様の要望もあって、年刻みで曲をかけながら時代背景を解説するようなイベントも既に何十回と開催しているのである。これはこれで、自分自身の記憶の整理にもなるし、面白がってくれるお客様も多いので、サブカル人類学的な年表解説まで入る音楽イベントもやっているのである。

 

さて、これが時々は轟音で古いロックが流れているポークジンジャーが美味い店の背景にあるストーリーの一部であり、それを発信するツールとして、現在の「続・下町音楽夜話」は機能しているのである。お客様が不思議がっていただけるうちが華だろうが、特別面白い話でもない。地元の役所を早期退職して、趣味の店をやっている本と音楽が好きな下町のオヤジの裏話である。さあ、今日も仕込みのBGMはレッド・ツェッペリン!!

 

 

 

 


   

         
 Links : GINGER.TOKYO  saramawashi.com  Facebook  
 Mail to :  takayama@saramawashi.com     
 Sorry, it's Japanese Sight & All Rights Reserved.