0236 ああ、残念!(2019.09.14.

まさかの巨大台風直撃で、イベントが中止になってしまった。秋のイベント・シーズンだとは思うので、いろいろ影響は大きかったことだろう。各地で甚大な被害が出ている中でやるものでもないような自分のイベントなどは中止でいい。ただご予約をいただいていた皆さんに連絡を入れるのが結構大変で、やり方を見直さないといけないなと反省した。適正な個人情報の取り扱いが求められる世の中、カフェのイベントに参加する程度で連絡先など残し置きたくないというのが皆さんの本音だろうし、店側としても個人情報を蓄えたくないのだ。それでも中止の連絡はできるようにしておかないといけない。せめて「イベントの最新情報はホームページに掲載しておきます」という程度には情報共有できるようにすべきだろう。SNSで繋がっている人間にしか中止の連絡ができなかった今回、大きな反省点となってしまった。

 

イベントは1970年代終盤の、新時代を迎えつつあれこれ模索していたアーティストの、どこがどう新しいのか、古いのかを語る内容の予定だった。一応7インチ盤専門店のプロモーションも兼ねているイベントなので、この回も7インチ縛りで選盤してあった。オープニングはレッド・ツェッペリン「フール・イン・ザ・レイン」である。以前もかけたことのある曲だったが、イベントの趣旨を説明するのに最適と思い、再登場の予定だった。如何せんジョン・ボーナムにサンバのリズムを叩かせてしまう猛烈な曲だ。しかもギター・ロックのカテゴリーからも一歩踏み出している。彼等も新時代を見据えていたのだろう。次がジェフ・ベック「エル・ベッコ」、さらにエリック・クラプトン「レイ・ダウン・サリー」と続け、3大ギタリストの模索ぶりを語るつもりだった。英国勢はさらにマッカートニーのルーツ回帰的な趣きのウィングス「夢の旅人 Mull Of Kintyre」、ローリング・ストーンズ「スタート・ミー・アップ」など、大物アーティストの既出組曲が続く。また、時代を語る上で外せない2曲としてスーパートランプ「ロジカル・ソング」とレインボー「オール・ナイト・ロング」を選出していた。いい音で鳴る盤ばかりなので、やはり残念だ。

 

アメリカ勢は、スティーヴ・ペリーが加入して大きくポップなロックに舵を切ったジャーニー「銀河の翼 Wheel In The Sky」からスタートだ。続けてジェファーソン・スターシップ「ジェーン」も、これまでの曲と比較すると変貌ぶりが面白い大名曲ロック・チューンだ。ボストン「遙かなる思い A Man I’ll Never Be」は、他が有名過ぎて出番のない曲代表、こういったバラードのクオリティが妙に高いところがこのバンドを特別なものにしたのではなかろうか。78年に公開されたザ・バンドの解散コンサート映像のサントラから「ラスト・ワルツのテーマ」も名バラードだし、イーグルス「ふたりだけのクリスマス Please Come Home For Christmas」も名ロッカ・バラードだ。また同時に、時代を象徴するような他の曲の陰に隠れてしまう名曲代表でもある。

 

実は今回のイベントでは、この手の普段かける機会を逸しがちな曲を多めに集めてあったのだ。トゥービー・ブラザース「リアル・ラヴ」、リンダ・ロンシュダット「お願いだから How Do I Make You」、ジャクソン・ブラウン「ブールヴァード」、バグルス「思い出のエルストリー Elstree」、ゲイリー・ニューマン「コンプレックス」、クラフトワーク「ショウルーム・ダミー」、TOTO「ジョージー・ポージー(当時の表記は「ジョージー・ポーギー」) Georgy Porgy」といったあたりは、なかなか陽の目を見ない曲群ではなかろうか。どれも好きな曲だけに、やはり残念だ。

 

時代感覚を強く意識させる曲といえば、ニューウェーブ系中心になってしまうが、ものがなければ難しい。ニューウェーブ系の7インチは人気もあるのか、なかなか入手困難なものが多い。その中ではプリテンダーズ「愛しのキッズ」、カーズ「レッツ・ゴー」、ジョー・ジャクソン「奴に気をつけろ Is She Really Going Out With Him?」、ジョン・フォックス「ヨーロッパ・アフター・ザ・レイン」といったものを用意していた。やはりターンテーブルにのせる機会が少ないものばかりだし、その割には語るべきストーリー満載の曲ばかりなので、これもやはり残念だ。また同時期にブームが訪れたフュージョンに関してはブレッカー・ブラザース「イースト・リヴァー」なども用意してあった。超残念。

 

トリは時代の空気感を強く内包しているということで、パイオニアのロンサム・カーボーイのCMで使われたライ・クーダー「アクロス・ザ・ボーダーライン」を予定していた。古きよき時代のアメリカに寄せる憧憬、ロード・ムーヴィーのようなCM、そしてコンセプトと見事なまでにシンクロするライ・クーダーのスライド・ギター、今の時代には作れないような映像も含め、かなり貴重な体験をシェアできたのではないかと思う。残念だが中止は中止であり、延期ではない。後の予定が詰まっているので、お蔵入り企画というわけだ。事実売り物を使って開催しているイベントであり、次の機会に同じ内容でというのは非常に難しいのである。ああ、残念!

*今回の台風で被災された皆様には心からお悔やみ申し上げます。

 


   

         
 Links : GINGER.TOKYO  saramawashi.com  Facebook  
 Mail to :  takayama@saramawashi.com     
 Sorry, it's Japanese Sight & All Rights Reserved.