0243   雨の日と月曜日は（2019.12.02.）

11月後半からグッと冷え込みが厳しくなった今年、やはり気候変動を肌で感ずるといった会話が多く聞えてくる。秋という季節が短くなってしまった近年、服装が夏物からいきなり真冬に切り替わる。自分のようなオシャレに全く関心がない人間にとっては便利だが、あまりいい気分ではない。急な冷え込みで体調もすぐれないし、銀杏並木を見に行くタイミングも難しいことになってしまった。それでも昨日はつれあいと外苑前の銀杏並木を眺めてきた。今年は落葉が近年と比べ早かったのか実に寂しい光景だったが、猛烈な人出は相変わらずだった。そそくさと逃げ帰ってきたが、一応の「生存確認」はできた。

「生存確認」というのは、2000年頃に都営地下鉄の中で鼻血が止まらなくなってしまい、慶応大学病院に救急搬送されたことがあり、その時に見た銀杏並木の美しさが忘れられず、我が家の年中行事として、毎年訪れるようになったのである。キッカケがキッカケだけに、今年もまだ生きているぞという「生存確認」のようにもなっているのだ。面白い話でもないが、実はこの話がTV番組を制作する方の目にとまり、番組の中で紹介されるという。2019年12月14日オンエアのNHK BSプレミアム「ニッポン印象派」という番組で、外苑の銀杏並木にまつわる人間模様を朗読スタイルで紹介するものの一つとして選ばれているというわけだ。おかげでこの秋は一つ忘れられないものになったと言いたいところだが、いきなり冬になってしまい、盛りの時期を逃してしまった。以前にも増して忙しく働き続けている昨今、動けることの幸せを噛みしめつつ、ほんの少しでも立ち止まって自分の人生を振り返る機会が持てたことは喜ばしいと思うべきだろう。

その翌日、すなわち今日は、季節外れのような大雨である。月曜日はただでさえ客入りが不安定で、加えて猛烈な雨とくれば記録的な低調ぶりは想定内だ。それにしても酷い。記録的なお客さんの少なさに呆れ、アルバイトのスタッフを早めに帰し、普段はなかなかできないでいるレコードの整理などをしている。ついでにアップがズルズルと遅れている音楽夜話でも書くかといった状況なのだ。突然時間ができるのは嬉しいことでもあるが、営業時間内だとお腹が痛くなるような不安感がもれなくついてくる。全くもって、店舗経営というものは面白いようで面白くない。経営者なんて金のことばかり考えているつまらない職業だ。

さて、レコードの整理はどういうわけかエンドレスである。何がどこにあるかを100%把握できていないことがいけないのかもしれないが、量的に無理がある。ある程度は把握しているが、毎度毎度整理し始めると驚きの連続だ。「おう、こんなのもあったな」を繰り返し、自分はバカかと思い始める。買ったまま放置してある盤が無尽蔵に出てくることがおかしいのだが、あるのだから仕方がない。自宅のレコード部屋はジャングルと呼んでいるが、何が出てくるかわからないのでもっと怖い。カフェに持ち込んである７インチ盤は、まだたかが知れている。いつかは完璧に整理したいものだ。以前はファイルメーカーというデータベース・ソフトを使っていたが、最近はもっと手軽に調べられるようにエクセルで一覧表を作っている。この作業もヒマを見つけてはやっているが、遅々として進まない。洋楽はある程度入力が終わっているが、邦楽は未着手である。100%にはほど遠い。

目の前にマイルス・デイヴィスの７インチ盤が２枚ある。本好きのコーナーに飾ってある３枚を加え、マイルスの７インチを５枚保有している。７インチの大きさが好きなので、飾って絵になるジャズの７インチ盤は貴重なコレクションである。曲が長いこともあっていずれも33回転、「ソー・ホワット」なんぞ「カインド・オブ・ブルー」のアタマなので、LPでは外周域にプレスされており、７インチ盤の音質が劣っていることは間違いない。ただ盤が小さい分、振動は拾わない。一長一短か。ジャケットの状態は極上の美品。果たしてこれを売り場に出すべきか悩ましい。そもそもいくらの値札を付けるか？相場なんぞ知れたものではない。こんなブツ、後にも先にもこの盤以外中古盤店で見たことがない。ロックやポップスに比べ、ジャズの７インチ盤が少ないのは厳然たる事実だが、如何せんマイルスの極上美品である。さ、どうしたものか。

師走に突入し、忘年会シーズンとなってきた。ウチでも恒例のGINGER PARTYが控えている。今年もお楽しみ福袋はやる。例年笑えるハズレ盤も仕込んであったが、今年は全てまともな盤である。複数枚保有している人気曲の７インチ・シングルを30枚ほど選び出した。売値はいずれも1500円から3000円程度のものばかり、40～50年の長期にわたり箱内熟成された極上美品である。何をもらっても損はない。如何せん参加費1000円でワン・ドリンク・軽食・福袋付きである。やれやれ、雨の月曜日のせいで、もうヤケッパチだな。ともあれ、オススメ曲を無理やり他人様に聴かせようという、音楽好きしか楽しめないパーティだが、これがなかなか面白いのだ。ご都合がよろしければ、是非！