0247 不機嫌な年(2019.12.31.

今年も年末は京都である。年中行事的に年の瀬の京都にきてのんびりしていることが、一年の最大の楽しみのようになってしまった。今年を振り返えると、何とも慌ただしい一年が、あっという間に過ぎ去ってしまったようでロクに記憶もない。何だか何一つ楽しいことがなかったような不機嫌な一年だったように思う。5月に老巨猫ジンジャー君が17歳で亡くなったことが最も堪えたか。9月には母親も亡くなったが、一緒に暮らしていたわけでもないし、さほど親密な親子関係でもなかったので仕方がない。久々に親族が集まったところで、話がかみ合うわけでなし、何だか寂しさだけが募ってしまった。

 

12カ月で一体何が残せただろうか。30回を超えるトークイベントは粛々とこなしたので、それなりの人間関係も築けたことは嬉しいが、読書会は5月で中断し、秋に一度だけ開催しただけなので寂しい限りである。そもそも参加者がロクに集まらないのであれば、やっても仕方がない。自分ばかりではない、皆さんお忙しいのだろう。そもそも読書はパーソナルな行為であり、知識を深めたり、想像力を高めたりという多大なる付加価値のあるものだが、他人様とシェアするのはなかなかに難しい。本の話題で楽しめる方法は他にないか、もう少し工夫が必要だろうし、今の自分が持っている最大のリソースとしての「時間」を割くには、少々インプット量が不足しているようだ。年明けに再開し月一ペースで継続することにはなっているが、どうしたものか。

 

物書きの側面では「深川経済新聞」というものもあったが、どうも他力でどこまでできるかと思ったが、地元愛に溢れた有能なるボランティア・ライターなどそうそう居るわけがない。休眠状態になってしまい、本部に迷惑をかけてしまった。この活動も年内で終了である。ロクな人間関係が築けたわけでもなく、全く時間とカネの無駄遣いだったようだ。人間関係のゴタゴタを持ち込まれたような部分もあり、実に腹立たしい。その他にも入店禁止にした団体や人間もいたりするので、今年はどうも不機嫌な年という印象が強い。平成から令和になったところで特に影響はなし、消費税が10%になったことでバタバタが酷かった10月以降はさらに不機嫌が増したといったところだ。

 

さて、今回の京都旅行でも恒例のレコ屋巡りには少々時間を貰った。毎年行く100000tアローントコに加え、今年は夕飯の待ち時間にすぐそばにあったHAPPY JACKというお店でも15分ほどレコ掘りをして珍しい盤を入手することができた。いずれも極上の美品である。とにかくHAPPY JACKで入手した古いサントラ盤は嬉しい。ソフィア・ローレンとマルチェロ・マストロヤンニの「ひまわり」、ルイ・アームストロングとダニー・ケイの掛け合いが楽しい「五つの銅貨」の主題歌「聖者の行進」、そして極めつけはテレビ映画「ローハイド」のサントラである。ローハイドは自分が生まれた頃に放映されていたドラマであり特別思い入れがあるわけでもないが、再放送を観ているのか、もう無茶苦茶に懐かしい。かのクリント・イーストウッドの出世作でもある。ここでのロディ役が「荒野の七人」出演に繋がったことは間違いない。若くて頼りないイーストウッドの存在感は演技以上の何かを持っている魅力を感じさせた。

 

100000tでも相変わらず嬉しい収穫があった。16枚+絵本1冊で7,000円。旅先でなければもっと欲しいものはあったが、あまり荷物を増やしたくもない。まず絵本は宮沢賢治の「猫の事務所」をつれあいが見つけてくれたもので、これは非常に嬉しい収穫だ。古い話だし、差別云々のストーリーは少々難しく、現代の子どもに読ませても解ってもらえるとは思えない。むしろ大人でも簡単には賢治の意図が理解できるかどうか。それでも生前に賢治が発表した数少ない子供向けの物語であり、個人的には非常に懐かしいものでもある。レコードも含め、今回の最大の収穫かもしれない。

 

レコードはやはり古いサントラ盤に嬉しいものがあった。スティーヴ・マックイーン主演のモトクロス映画「栄光のライダー」、ゴダールの「女と男のいる舗道」、また「蒲田行進曲」なども非常に状態のいいものが入手できた。その他には、リッキー・ネルソンの1962年~63年のヒット・シングルを6枚まとめて購入した。いずれも非常に状態がよく同一人物の放出であろう。彼のヒットはリアルタイムでは「ガーデン・パーティ」しか知らないが、如何せん19588月にビルボードのHot100が始まった第1号のNo.1ヒットが彼の「Poor Little Fool」という曲なのである。いろいろデータにあたりながら古い曲を紹介するトークイベントばかりやっている身にとって、毎度気になるアーティストなのである。またもう少し若い方にはネルソンの2人の親父だと言った方が通じるかもしれない。昔のポップ・アイドルに過ぎないと言われようが、自分にとっては重要人物なのである。

 

毎度思うことだが、京都の魅力は古いものが当たり前のようにその辺に転がっていることで、レコ屋でちょっと漁ると東京では絶対にお目にかかれないような古い盤の美品に格安で出会えるのである。もう少し頻繁に通いたいところだが、それを言うと贅沢となるか。年に一度京都へ遊びに行くことを楽しみに、不機嫌な日々を乗り切れるということで満足しておくとしよう。

 

さて2019年も駄文にお付き合いいただき有り難うございました。2020年もよろしくお願いいたします。どうぞよいお年をお迎えください。

 


   

         
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