0248 2020年初頭に思う(2020.01.04.

あけましておめでとうございます。今年もアナログや7インチ盤を中心とした音楽談義にお付き合いのほど、よろしくお願いいたします。

 

音楽は最低限好きなものでも聴いていれば成り立つ安易な趣味ではあるが、演る側はそうも言ってはいられまい。配信やらの影響で音楽では食っていけない時代になったというが、一方でミュージシャンが減っているとも思えない。アナログ・レコードの売上はCDを凌駕するまでに復活したというが、音楽ビジネスの中ではまだまだ大したシェアを持っているわけではない。そもそもアナログだけでリリースするわけではない。買う側の選択肢の一つとして、プレミアムな価値を提供する器という位置づけになっているようだ。

 

またYouTubeなどで自作曲を発信するアマチュアは多く、一旦火がつけばあっという間に人気アーティストの仲間入りだ。そこに要する期間の短さといったらレコード・デビューなどといった時代と比べるまでもなく、信じられないほどのスピード感だ。結局のところ、玉石混交のウェブにおいて、実力さえあればいずれ頭角を現すなどと言っている余裕はない。いかに売り込むかで勝負が決まるようだ。そういった意味ではフォロワーの多いミュージシャンが支持すれば一発とも言えるし、「天才アーティスト登場」と鳴り物入りでデビューしてきても、大した才能を感じない場合も多い。むしろ実力もないのに火がついてしまった場合、悲惨なことになるような気がしてならない。何だか恐ろしい世の中になってしまったようだ。

 

とにかくここしばらくでリリースされた新譜で惹かれるものがほとんど無い。ノラ・ジョーンズのアルバムも、妙に低音が入り過ぎていて、ボリュームを上げて聴くと地響きのようになるので不快感の方が勝ってしまうものだった。恐らくスマホで聴くことを前提としたミキシングなのだろう。バランスの良い録音だと思えるアルバムには滅多に出会わなくなってしまった。ウィルコも一時期ほどの輝きがないし、どうも現代の音楽は自分にとって同時代感を持てる領域から外れてしまったようだ。実際には情報源としてのラジオは結構聴いているし、新譜チェックは欠かさずやっているので現役感を持って聴いているつもりだが、人間が古くなってしまったというのはこういうことなのかと諦めが出てきている。何せあと3月もすれば還暦だ。

 

一方で7インチ盤の専門店をやっていることへの認知度が高まっているのか、売上も伸びているし、お褒めいただくことも増えている。結果として古いものばかり聴くことになっている。中古盤店でスリーヴ付きの国内盤7インチは本当に入手困難な状況になってきた。その中で一定のクオリティを維持し続けるのは困難極まりないが、致し方ない。店の個性を維持するという意味では下手に妥協はしない方が得策だろう。邦楽を減らしてでも洋楽のロックを中心とした品揃えは充実させている。また古い映画のサントラ盤は、自分自身の興味を反映していることもあって、地味に増えている。ロックも映画のサントラもLPの方が一般的なのは明らかであって、希少性という付加価値を持つ7インチ盤の相場は高騰する一方だろう。ただし、7インチ盤に対する需要自体実にニッチなものでもあり、価値を認めない人間も多いので、今後のチャンスはそのギャップにあるかもしれない。

 

とにかく、1970年代のアーティスト達はかなり高齢になってきており、ここ数年親しみのある名前の訃報に驚かされてばかりだ。残念だが今年も続くのだろう。こればかりは避けられまい。訃報に接するたび、レコードを出してきて聴いたりもするが、ブリティッシュ・ロックの有名どころは普通以上に揃っているのだから、もっと針を落とすことに注力したいとも思う。例えば、ウィッシュボーン・アッシュ、ムーディ・ブルース、プロコル・ハルム、ジェスロ・タル、ユーライア・ヒープ、ハンブル・パイなどといったあたりは、レアなものも含めアナログで揃っているはずだ。一つ一つのバンドをテーマにイベントをやっていくのも悪くはないなと思っている。ただし問題は、人が集まるかだ。

 

2月で丸5年になるカフェに関して一定の認知度は得られたようなので、今後少しBGMは個性的であるようにしていこうと思っている。イベントもやり過ぎのように言われるが、せっかくアナログ・レコードが大量にあるわだし、使わないのはもったいない。これまでのように無難な選曲でということは意識的に避けるようにするつもりだ。土曜日のイベントは1月が映画音楽、2月がジャケットに関することと決まっている。3月以降も大人が楽しめる音楽イベント、好き者が集まれる場を提供していこうと思う。DJイベントは若い人たちに任せておけばいい。自分は年表やら近現代史の面白いテーマと抱き合わせ、古い音楽を聴く今のやり方を深めていこうと思う。何はともあれ、2020年も音楽漬けであることは間違いない。好き者さん、清澄白河のGINGER.TOKYOでお待ちしております。

 


   

         
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