0250 映画音楽の夕べ(2020.01.19.

カフェの常連さんでもある非常に映画や音楽に詳しいご夫妻にお願いして、というかほぼ強要して「映画音楽の夕べ」なるイベントを開催した。ミニライブに加え、店のスタッフでもある声優陣も含め、入れ替わり立ち代わり大勢が語る面白い内容だった。資料なども作り込んであり、なかなか準備に苦労した痕跡が散見されたが、その分達成感も大きかったのではなかろうか。自分の場合も同じだが、終わってみるとイベントの準備はなかなか面白いものなのである。また当日は満席で、多くのお客様が「楽しかった」と笑顔で帰っていかれるところをお見送りする気分はなかなかいいものだ。自分ばかりがやるのではなく、たまには他の方にお願いしてイベントをやるのも悪くないと感じた一夜だった。

 

自分の場合、映画音楽に特別思い入れがあるかと問われると否定せざるを得ないが、それでもそこそこ関心は持っている。生まれて初めて購入したのは「大脱走のマーチ」と「雨の訪問者」の7インチ盤だった。また、映画を観て少しでも気になる曲が収録されていればサントラ盤は購入するし、観てなくとも好きなミュージシャンの曲が入っていれば買う。全て音楽起点であり、動機としては不純である。映画を観ることは嫌いではないが、最近は時間がなくて年に数本がいいところだ。とても映画そのものを語れる人間ではない。それでも一時期、1980年代中頃から2000年代前半までは随分観た。当時住んでいた家の近くに名画座があったこともあり、タイミングさえあえば観ていたような時期もあるのだ。多いときは週に10本程度観た。それでも自分が映画好きとは思ってない。

 

「何が好きか」と問われて答えるのは、大抵「ブレードランナー」か「フラミンゴ・キッド」か「ターミネーター」といったところで、時期的に集中している。その後は日常への不満やらイライラを抱えており、気分を換えたくて観るようになってしまい、純粋に映画そのものを楽しんでいないような気がするのだ。つれあいに付き合って「ハリーポッター」や「パイレーツ・オブ・カリビアン」のシリーズなどを観に行った頃はまた純粋に映画を楽しめた気もしていたが、その後は忙しい日々となってしまい、映画を観たいという気分になることが無くなってしまった。昨年久々に「ボヘミアン・ラプソディ」を観ようと出かけて行って、タイミングが合わず諦めたことが全てを物語っているのかもしれない。

 

映画音楽に関しては、映像と切り離して考えているところもあり、観ていない映画のサントラも随分好きなものがある。フェビアン・レザ・パネのピアノが印象的な「さらば愛しき人よ」などがその典型か。もっと活躍してもいいピアニストだと思うが、彼の情報はウェブでも限られている。この映画は観ていないがサントラ盤は大好きだ。また昔、イラスト・ジャケットが好きで集めた1960年代のサントラ盤は観ていないものだらけである。テレビで観たものもあるが例外だ。「アパートの鍵貸します」やマリリン・モンローの「お熱いのがお好き」もちゃんと観ていないが、これらのサントラ盤はかなり大事にしているお宝アイテムである。また、エルヴィス・プレスリーの映画もあまり縁がなかったし、ビートルズの映画も観ていない。音楽が好きでもキャラクターが好きとは限らない。

 

それでも自分のコレクションをよくよく見ると、古い年代のものはジャズを除けば映画のサントラばかりだ。つまりサントラ盤は間口が広いということか。様々な音楽の入門編として機能する側面は確かにある。また1970年代という時代特有の空気感を持った映画や音楽に育てられた自分は、どうしてもヴェトナム戦争やヒッピー文化、カリフォルニア幻想などと切り離せない思考回路を持っているので、好みが限定されてしまう。その後多くの映画を観たものの、世の中一般的に名画と言われるものでも好きになれないものが多く存在する。思い入れのある方の気分を害するといけないので具体例は挙げないが、どうも一般的な映画好きの方とは話が合わないと感ずることが多くていけない。そしてジョン・ウィリアムズがあまり好きではない。1970年代後半からは大ヒット作に多くジョン・ウィリアムズの曲が使われているので戸惑う一方、その頃からロックのコンピレーション・アルバム的なサントラ盤が増えたことは大歓迎だった。

 

今回、「ぜひ映画音楽のイベントを」というオファーを受けながら自分でやらなかったのは、1990年代以降の映画に関して、ほとんど語るべきネタを持っていない自分がやると1960年代から1980年代末までの作品を紹介しながらアナログで鳴らすという、ありきたりのものにならざるを得ないと感じたからでもある。やはり自分より若い人たちがやると一気にカテゴリーも広がるし、好みも多彩になる。実際に自分では選ばないような作品ばかりが紹介され、あまりの好みの違いに唖然としたことも記しておかなければいけない。今回の映画音楽の夕べで紹介された作品で、自分がしっかり観て、しかも語るべきネタを持っているのは「オーメン」一本のみだったのである。しかも自分だったら、背景にある宗教観や聖書との関連などを語ってしまったであろう。やはり「ときどき他人様にマイクをお任せしたほうがよさそうだ」と強く感じた次第である。

 


   

         
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