0251 まもなく5年…(2020.01.26.

最近カフェが猛烈に混んでいる。清澄白河という町全体が、以前にも増して人気になっていることは確かなようで、東京メトロが仕掛けているイベントの効果もあってか、週末などはもの凄い人出で呆れるほどの様相だ。要はウチが人気というわけではなく、町のキャパを超える来訪者がいるのだと考えている。まもなくオープンして5年になるが、特別宣伝するわけでなし、看板もロクに出していないような隠れ家的なカフェが満席で入れないというのは、やはり尋常ではない。クチコミ情報など読みたくもないのでどんな書かれ方をしているのか知らないが、ドッと押し寄せるほどのものではないはずだ。とにかく他のことをする余裕が全くない。日々仕入れと仕込みに追われているが、そんな中で頑張ってイベントの準備だけは怠らないようにしている。しかしあまりの忙しさに、これも何のためにやっているのか分からなくなってしまいそうだ。

 

とにかく自分自身のアイデンティティの確立、最近の言い方ではパーソナル・ブランディングというのか、自分自身がどう在りたいか、自分自身としっかり向き合ってきた結果が今に繋がっているはずなのだ。カフェのオープン当初は自分がそこに居るつもりがなかったので、内装やらコンセプトやらメニューづくりも全て他人任せだった。そのために現在でもGINGER.TOKYOというカフェは自分好みを貫いたものにはなっていない。自分に内装をやらせたら、おそらく真っ黒な空間になってしまうだろう。アナログ・レコードも、当初の計画では持ち込む予定ではなかった。軌道に乗って2軒目3軒目という話になったとき、自分の個性を出してみるのもありかと思っていた程度で、1軒目は認知されることを目的とした「イベント空間のわりに美味い店」を目指していたのだ。しかし現実はそう甘いものではなかった。

 

とにかく当初はいろいろなメニューを試してみた。その結果お客様に人気だったものだけを残してきたのだから、現在のメニューは最強のはずだが、これが当初の計画とはまるで違うものなのだから困ったものだ。当初はガレットなども焼いていたし、ランチもいろいろ試したが、特定のものだけが人気になってしまった。しかもコーヒーの町とか言われていながらコーヒーの注文が予想外に少ない。スイーツも惨憺たる状況だった。お客様の要望を汲んだ結果がランチ屋的なカフェ、すなわちカフェめし屋になってしまったのだ。問題は音楽関係で、夜は音楽を聴かせる店として一定の認知度は得られたが、これも一時の話、売上の大半はランチでということになってしまった。そんな状況が3~4年続き、ここにきてランチは以前にも増して激混み、夕方から夜もかなりの数のお客様がいらっしゃる。これはさすがに無理だ。そもそも体を壊して早期退職した人間がやっているのに、以前よりも忙しいような有様はまずい。

 

面白いのが音楽関連で、オープンから一年経ったところで、古物商の免許を取得して7インチ盤専門店をショップ・イン・ショップで始めた。当初は珍しさもあってか、結構売れたが売上は直ぐに落ち着いた。当初貴重盤は店に出していなかったが、贅沢ばかり言ってもいられず、ありったけの盤を出したところ、一部のマニアが驚くことになった。それもそのはず、アナログからCDに切り替わった頃に、安く売られていたものをせっせと買い集め、2030年と押し入れで保管してあった盤が山ほどあったのだ。タイムカプセルから取り出したような美品が大量にあるのだから、驚きもするだろう。それでも如何せん7インチ盤専門店、ニッチはニッチだ。一部のマニアが定期的にやってきてウホウホ顔で買っていく。BGMに関しては、当初から「ジャズはどこでも流れているから」という理由で、古いロックに絞り込んでいた。そんなわけで、なかなか不思議な店になってしまったのだ。

 

これまたお客様の要望で始めた音楽のトーク・イベントが人気になって止められなくなってしまったこともあって、業界の方も含めた音楽好きが集まってくる店にはなったが、まだまだうまく回っているとは言い難い。何とか態勢を立て直そうともがいているが、思うようにはならない。結局ほとんど働き詰めである上に、週末は亡くなられたつれあいのご両親が住んでいた家の片づけやらいろいろやるために成田にいることも多く、今日もこれを成田のタリーズで打っているわけだ。さすがにあと2月ほどで還暦を迎える人間にこれはキツイ。

 

カフェはあと10日で5周年になる。ここまで続けられたのは、何と言ってもつれあいの頑張りであって、ただでさえ忙しい身であるにも関わらず、毎晩皿洗いや仕込みの手伝いにきてくれる。それでようやく午前1時か2時頃タクシーで帰宅している状況なのだから、本来は不可能を可能にしてくれているというのが正直なところである。世の中の飲食店は5年で9割が消えるという。1割に残っているとはいえ、反則技を使っているような気もしてならない。ただ、我がGINGER.TOKYOを愛してくれているお客様が結構な数いらっしゃるわけで、もう少し続けないと申し訳ないという気にもなっている。はてさて、いつまで続けるべきなのか?人気になり過ぎて潰れたのでは冗談にもならないではないか。

 


   

         
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