0252 レコード・ジャケットは奥深い(2020.02.01.

昨年11月に「猫見豪&むらたぬきの気になるジャケットーーク!」というイベントがGINGER.TOKYOで開催された。ミニライブなども挟んで楽しいイベントだったが、参加されていた方から、「あなたならもっと違うものができるでしょう」というお誘いをうけ、自分自身でレコード・ジャケットに関するトーク・イベントを開催することになった。当然できますとも。正直なところ何枚あるかよく分からない自分自身のコレクションの中には、結構珍しい変形ジャケットなどもいろいろある。やれと言われればやりますよ、という程度で少しずつ準備してきたが、とうとう開催日が近づいてきた。100枚程度持ち込んで準備をしてみたところ、段ボール6箱で足りるか足りないかといったレコードの山が出来上がってしまった。さてさて、楽しいことになってきたぞ。

 

普段継続的にやっているトーク・イベントも「大学の講義みたい」と言われているが、どうしてもアカデミックに語り過ぎてしまう。温故知新的な感覚が好きということもあって、ついつい年表を引き合いに時代感覚などを語ってしまうので、音楽のイベントといってもDJイベントとは全く違うものになっている。さて、今回のレコード・ジャケットに関する回も普段以上に語ることになるだろう。だいたい3時間で3536曲お聞かせするが、今回は曲数を減らしてトークを増やさないと話にならない。20曲かけられるかどうか。だいたい150枚程度は回覧して語ることになりそうなので、その辺が限界だろう。始まる前からVol.2をやらないと無理かもという気もしている。

 

ともあれ、レコード・ジャケットはSP盤の時代にはなかった。全集や名曲集などといったものは、昔どの家庭にもあったフォト・アルバムのようなケースに入れられていたりしたが、原則的にはレコード会社の袋に入れられていただけだ。それが10インチ盤やLP盤になってジャケットに入れられるようになったわけだが、当初は中身の宣伝に近いものだったと考えている。1960年代のサントラ盤のイラスト・ジャケットが大好きで結構な枚数をコレクションしているが、この時代でもイラストとともに中身の説明的な文言が載っている。ただしタイポグラフィカルな楽しみもあって、時代を感じさせる文字は見ていてそれなりに楽しい。それが段々中身の音楽とともに、パッケージ・メディアの一部として認識されるようになり、果てはタイトルすら表記していないジャケットも多く登場することになる。宣伝からアートへと進化したジャケットという観点で見直すとまた面白い。

 

レコード・ショップに他の盤と一緒に並べられて売られることを考えると、いかにインパクトのあるジャケットにするかということも一つの重要な要素だ。「クリムゾン・キングの宮殿」やスーパートランプ「ブレクファスト・イン・アメリカ」などのジャケットは、中身を絵的に代弁するとともに、インパクトも十分で語るべき必須アイテムではなかろうか。一方、ホール&オーツの「Whole Oats」やフォガットの岩とパンが並んだだけの「ロック&ロール」のようなくだらないダジャレ的なものも、体系立てて説明する際には重要なアイテムとなってくる。よく考えるものだと感心したりもする。

 

時代とともにヴィジュアル・アートへと進化したジャケットは、人気デザイナーなども生み出す。プログレッシヴ・ロックやブリティッシュ・ロックとは切り離して考えることができないヒプノシスのようなデザイナー集団も人気だったりする。もっと言えば、好きなフォトグラファーやイラストレーターが手掛けたジャケットを集める楽しみも出てきたりする。自分はヘルムート・ニュートンやノーマン・シーフといった写真家のジャケットが好きだが、中身の音楽とイメージが重なったりしたとき、何とも愛おしさが増す。リッキー・リー・ジョーンズに関しては、ファーストの印象的なノーマン・シーフの写真に続いて、セカンドでブラッシャイの写真を使った時点で、一生フォローする心構えができた。ジャズの世界であれば、フランシス・ウルフやウィリアム・クラクストンの写真だろうが、ロックの世界では多くの写真家が素晴らしい作品を沢山残している。いくら語っても語り尽くせない世界が広がっているのだ。

 

一方でイラストレーターも魅惑の世界を構築している。先述のように1960年代のサントラ盤で楽しめるイラストの魅力はまた格別だが、イエスの諸作を担うロジャー・ディーン、ジェリー・ラファティのジャケットを担当したパトリック、リトル・フィートのネオン・パーク、スニッフン・ティアーズのポール・ロバーツ、多くの映画看板とともにカーペンターズのクリスマス・アルバムなども手掛けたタンネンバウムなど、決して見飽きないアート作品が山ほどある。アンディ・ウォホールの作品を探すのだって楽しいし、シカゴのいろいろなロゴ・アートも絶対的な価値がある。

 

今回門外不出と思っていた盤を、自宅から大量に持ち込んできた。その多くは特殊ジャケットのレコードである。四角ではない変形ジャケから飛び出す絵本的なもの、めくると別の絵柄になるギミック・ジャケなどなど楽しいものがいっぱいだ。エンボス加工の美麗盤や英米で別デザインを持つレコードなど、実際に手に取ってみないと分からないものも多数持ち込んだ。さてさて、いくら時間があっても足りない状況は毎度のことだが、今回はスペシャルに濃い内容となりそうだ。そんなわけで25日水曜日と28日土曜日の2回、同じ内容で開催することとなった。手前味噌ではあるが、かなり貴重な機会と思っている。ぜひぜひ、お席のご予約をお待ちしております。

 

 


   

         
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