0255 スタックリッジ!!2020.02.23.

ヒプノシスのイベントをやることになっていろいろ準備している。英語と日本語のWikipediaを対照して、可能な限り全件リストに近いものを作ってみたが、恐らくこんなものではあるまい。もれもれかもしれないが、それでも相当数は把握できた。そこから自分が持っているものを確認して、すべて店に持ち込んだ。リストには全く聴いたこともないアーティストの名前がいくつかある。ジャケット写真を見て、「ああ、これか」と思う程度のものがほとんどだが、全く知らないものもあって少々驚いている。英国国内でのみの人気に留まっているようなアーティストを知らないのは当然といえば当然、日本国内で発売されていないものもかなりありそうだ。一枚でも多く聴きたいがために、少しでも安い輸入盤を多く買っていたこともあって、日本発売の有無はさほど問題ではないはずだが、ヒットしていないものを把握すること自体が至難の業なので、ある程度の知名度を持つアーティストに限られることは仕方がない。

 

ヒプノシスのリストの中にスタックリッジがある。コーギスの前身バンドとして知り、遡って何枚か聴いた連中だ。アンディ・デイヴィスとジム・ウォルターの2人が結成したこのスタックリッジのファースト・アルバムのジャケットをヒプノシスが手がけているという。この情報に接して少々違和感を持った自分も相当ヘンかなと思いつつ調べてみたら、やはり理由がありそうだ。1969年に結成されたこのグループはグラストンベリー・フェスティヴァルの立ち上げにも関わっているようで、第1回のグラストンベリーのオープニングとクロージングを務めている。そしてファースト・アルバムのリリースに伴っての最初のツアーはウィッシュボーン・アッシュの前座としてだということなのだ。早速にヒプノシスと関係が深いバンド名が出てきた。以後、ルネサンスやウィッシュボーン・アッシュ、アヴェレージ・ホワイト・バンドの前身バンドのフォーエヴァー・モアなどとツアーを繰り返している。狭い社会の出来事だ。

 

この連中、100%のプロフェッショナルではないようなところがあることも面白い。どこの国でも売れるまではアルバイトなどをしながら活動し、大手のレコード会社と契約を取り付けた時点でミュージシャン専業となるが、この連中はどうもそうではないのだ。ファースト・アルバムをリリースする前後にベーシストのジム・ウォルターが脱退したのも煉瓦積み職人になるためだったというし、再結成後も本業を維持しながら週末のみライヴをやるようなことをしている。サンデー・バンドでここまでの知名度があるとしたら凄いことだし、ミュージシャンで食っていくことが難しくなったと言われる昨今、学ぶべきところがある連中かもしれない。

 

さて昨夜、レコード用の外袋が必要になって久々にレコード・ショップを覗いたところ、いろいろ状況が変わっていて驚いた。そもそも新宿あたりのレコ屋でビートルズの品揃えが猛烈なことになっていてビビったが、オリジナル・アルバムは各国盤を取り揃え、再発盤やベスト盤も全て揃っている。一体何百枚あるんだか。閉店直前の時間に驚愕の眼差しをもって見ているコレクターらしき外国人と我々のみという状況もシュールではあった。「おースタックリッジが揃っている!」と興奮してつれあいに説明している自分に、呆れたような視線を投げかけてくるこの外国人客は何をゲットしたのか、かなりの枚数を手にしていた。

 

彼の視線が気にはなったが、構ってなんぞいられない。後でスタックリッジを買おうとでも思っていたのだろうか?そこそこの状態のカット盤が数百円で買えるなんぞ夢のような状況だ。一時は猛烈な高値で取引されていたのだ。特に「ジ・オリジナル・ミスター・ミック」が発売された2001年頃はもう二度と手に入らないなと諦めていたものなのだ。ヒプノシスが手がけたというファーストは既に持っている。ジャケットだけでも興味深い「エクストラヴァガンザ」はトニー・アシュトンがプロデュースしている。コアなブリティッシュロック・ファンには要注意盤である。「山高帽の男」の米国編集別ヴァージョン盤「Pinafore Days」もこんなに状態のいい盤を見た事がない。嬉しい収穫で疲れも吹き飛ぶというものだ。

 

そもそも、ジョージ・マーティンがプロデュースした盤もあるなど、ビートルズ・フォロワーとしても評価されながら、人気はイマイチのスタックリッジは好事家にこそ好まれる不思議な連中だ。評論家からも高く評価されるわりにチャート・アクションは最低なのである。結果的に日本国内では入手困難な状況が続いているというわけだ。さて、ヒプノシスのイベントでスタックリッジをかけていいものだろうか?ファーストはヒプノシスがデザインしているのだから当然構わないだろう。しかし、この連中の深淵なる世界はその後のアルバムの中に広がっているのだ。やれやれヘタなブツを手に入れてしまったがために悩みが深くなってしまったかもしれない。本心ではベックもカヴァーしている「Everybody’s Got To Learn Sometime」あたりまで話が持っていければ面白いだろうに。…そんな時間的余裕があるわけないか。

 


   

         
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