0256 ただの音楽好きがやってきた(2020.03.01.

新型コロナウィルスで大変なことになっている。自分自身が感染していなくても、いろいろなところで影響が出てきた。カフェに関しては、パーティが一つキャンセルになった程度で影響は最小限に食い止められていると思う。入手し難い食材が出てくるのではということに関しては、用心して2月当初からストックを増やしたので特に問題は出てきていない。元々中国産のものは極限られたものしか使っていないので、手に入らなくて困るというものは今のところない。ただ段ボールが確保できなくて送り出せないだの、流通経路が遮断されただの、二次的な影響はいろいろ出てきている。そもそもヴァレンタインデーの季節は、バターや生クリームが手に入り難くなり警戒している。クリスマス前からその傾向が出始めるので、ストック調整は11月ごろから始めていたのだ。たかだかカフェの仕入れでも、いろいろ苦労はあるのである。

 

驚いたのはトイレットペーパーや消毒液が品薄になるという事態だ。たまたま買い置きがあった消毒液はしばらく問題ないが、トイレットペーパーは買ってこなきゃと思っていた日の朝のニュースでそういった情報が流れてしまったので、大慌てで家を出て買出しに動いたが、時すでに遅し、ドラッグストアなどは既に棚が空っぽになっていた。たまたま近所のコンビニで入手することはできたが、冷や汗ものだった。さすがにカフェのトイレでペーパーがなくて使えませんとは言えない。思い切りビビッてしまった。

 

一方でコンサートなどのイベントがどんどん中止や延期になり、テーマパークなどの集客施設が臨時休業となってしまったことで、大変な損害を被る人々が出てきたことに関しては、人災でもあるように思えてならない。思いつきでモノ言うような政府の決定や、「少し落ち着けよ」と言いたくなるようなヒステリックな言論がSNSなどで飛び交っていることは、想定内ではあるが危機管理意識の薄さとしか思えない。さすがに自分のトークイベントなど濃厚接触するものでもないし問題なかろうと思っていたが、やったがために無駄に責められる理由を作るようにも思われ、ここは右へ倣え、時流に乗って延期することにした。まったくもって腹立たしい状況だ。

 

さてそんな中、英国のウェブメディアの取材案件が入ってきた。某オーディオ・メーカーさんの紹介で、日本のアナログを取り巻く音楽環境全般に関する取材だという。ダンス・ミュージック専門という言い方だったが、おそらくクラブあたりで流れているような音楽を中心に取り扱っているメディアのようだ。とても上品な印象を終始貫いていたデヴィッドさんは52歳、元々エンジニアだったということで機械関連には興味津々だった。音楽に関しては普通に詳しい程度で、むしろこちらの情報の多さに驚かれているようだった。平日の午後、お昼のバタバタが収まった頃を見計らって一旦「Closed」を出してしまい、のんびり1時間半ほどしゃべることができた。こういうのはやはり人柄が大きく左右するもので、彼の穏やかで楽し気な雰囲気が随分場を和ませていたし、楽しい時間を過ごすことができた。

 

いろいろ試聴もしてみたが、はたして印象はどうだったのだろうか?GINGER.TOKYOで使っているJBLはメリハリのある音だが、オーディオの専門家の耳にどう聞えたやら。同行されたオーディオ・メーカーの国際営業部のスタッフさんもいろいろ楽しまれていたようだが、少しアドバイスでも仰げばよかったかなどと後から考えてしまった。自分から伝えられた情報として面白がっていたのは、海外からは日本のJ-POPあたりの音源を買いにくるお客様が多い一方で日本人は洋楽中心だということ、レコード針などが手に入り難い現状などだ。ドーナツ盤のオートチェンジャーにも興味を示していたが、冬の間はなかなかうまく動作しない。1949年製造のおじいちゃんに無理を言うものではない。

 

音源はジェネシスでどの程度低音が出るかを披露したところ、一曲でもう十分わかったということで、懐かしい曲をいくつか聴いてみることになった。クラフトワークの「ショールーム・ダミー」やジョー・ジャクソン「ホワット・ユー・ウォント」などを試し、ドリーム・アカデミー「ライフ・イン・ア・ノーザン・タウン」は随分意見を交わすことになった。デヴィッド・ギルモアのプロデュースだからいいのか?ニック・ドレイクに捧げるとあるが、そんな雰囲気はないがなどといった話ができたのはこちらも大いに楽しめたところだ。

 

途中オーディオ・メーカーの視聴室の超高額機器で鳴らしたドナルド・フェイゲン「I.G.Y.」が素晴らしかったという話題になって聴き比べてみることになり、7インチ盤で鳴らしたときは少々困った顔をしていたので、ウチの音も悪くなかったのだろう。「最後に訊きたいことは?」と終わらせることを示唆されたときに彼が言い出したのは「ドゥービー・ブラザースの「ホワット・ア・フール・ビリーヴス」が聴きたい」ということだった。丸々一曲をスピーカーの間近で堪能し、子どものような笑顔を見せてくれたときは少々ホッとしたものだ。結局のところ、ただの音楽好きなのだ。いやいや、なかなか楽しい時間だった。5月ごろ記事になるという。楽しみではないか。

 

 


   

         
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