0258 高齢社会のモチベーション(2020.03.16.

新型コロナ・ウィルスの感染拡大に伴って多くのイベントが中止に追い込まれている。感染が拡大するおそれがある場合は仕方がないかという気もするが、なんでもかんでもという風潮は不味いのではなかろうか。いろいろ考えて、自分の場合はイベントを実施することにした。どうしても実施しなければいけないような緊急性もないし、音楽好きが集まるだけのイベントだけに重要性も低い。ただこのまま自粛ムードに流されるのが嫌だった。どう考えてもウチのような席間がゆとりある店はクラスターになるような濃厚接触もなさそうだし、普段以上に衛生面に配慮すれば問題ない気がするからだ。

 

消毒液を多めに噴霧しながら、手洗いを実践し、また奨励していれば問題はないはずだ。具合が悪い方は遠慮していただくということは当然、感染の可能性が高いと思う人間は行動を自粛すべきだろうが、皆が皆活動を自粛したら経済が回らなくなるどころか、倒産する企業も出てくるだろうし、生活が立ち行かなくなる人も大勢出てくるはずだ。このまま消耗戦をやっていていいものだろうか。またイベントが中止になったことで余ってしまったものなどを積極的に購入するなどということは、大きな声でいうことではなく、当然の行動として心がけたい。「スタバは怖いがジンジャーなら大丈夫だろ」というテレワークになってしまったお客様のご意見には感謝しなければいけない。またジンジャーのことを心配して積極的にイベントに参加していただけた常連さんには本当に頭が下がる。こんなときでも、感謝感謝で生きていられる自分は幸せ者だと思う。

 

さてイベントに参加してくれた常連さんからジンジャーの5周年記念のステッカーを頂いた。本来なら店が作って配らなければいけないものを、自らデザインして作ってくれるお客様がいらっしゃることがあり得ないし、心底嬉しいではないか。日常に忙殺されていてこういったことに時間が割けない自分が情けないが、お客様どうしで繋がって音楽好きの交流も広がっており、少し嬉しい気分にはなるが、自分がその交流の場にいられる余裕がないことが一層情けない。こんなときこそ攻めの経営をということで、先週からLPレコードの販売も開始した。幸先よく毎日のように売れてくれることも有り難いが、そもそも思いつきで繰り出している戦略だけに準備不足は否めない。「レコードを購入してくださったお客様に配って」といって頂戴したステッカーが、どれほど嬉しいか、どれだけ心に染みるか、ご理解いただけるだろうか。

 

さて、イベントは先月のジャケットに関するものからスピンアウトした内容の「ヒプノシスを聴く」というものだった。英国プログレやハード・ロック界隈のジャケットを多く手掛けているデザイン集団「ヒプノシス」のアートワークを楽しみながら、ポップ・ロック、ハード・ロック、プログレッシヴ・ロックという実にテキトーな分類で括り、代表的なものを30曲弱聴いた。普段よりも長めの曲が多いこともあって、曲数は少なくなってしまったが、自分も要所要所でのみしゃべるようにして、「聴く」ことに徹したものである。お客様はあの広い空間に8名、普段のランチタイムよりもはるかに安全な環境だ。ドタキャンも2件ほどあったが、これは仕方がない。月に一回程度顔をあわせるイベントの常連さんたちと、「お元気ですか」と近況報告を交わすことが自分の生活ペースにもなっており、これを止めと言われても困るのだ。

 

意外なところで、10ccやポール・マッカートニーのウィングスといったあたりも含まれるので選曲は楽しめる程度のものだ。ウィッシュボーン・アッシュなどの、大好きなわりに曲が長めで普段のイベントではかけ難いものも今回は選んでみた。結果は概ね好評、「面白かった」と言っていただけたことに安心した。普段以上にバタバタしていることはお互い承知のうえ、納得できるものができただけでもホッとした。AC/DCやマイケル・シェンカー・グループ、コージー・パウエルあたりのハードなものはやはり轟音で楽しみたいものだし、プログレはジェネシス、イエス、ELP、ピンク・フロイドといった、キング・クリムゾンを除いた5大プログレ・バンドが揃うのだから当然楽しめる内容だ。トリはユーミンとミック・テイラーにして少々の意外性と蘊蓄を交えるいつものスタイルと相成った。いやはや、やってよかった。

 

轟音を浴びながら、ニコニコと「これもヒプノシスかぁ」などと楽しんでいらっしゃるお客様の笑顔が、現在の自分の最大のエネルギー源であることは自分にしか分からないことかもしれないが、ある程度の年齢になってモチベーションを維持できるネタがあることは案外これからの高齢社会において重要なことなのかもしれない。今回の新型コロナ・ウィルス騒動は高齢社会の在り方についてもいろいろ考えさせるきっかけになったように思う。人生100年時代と言われているわりに、アウトプットに乏しい生産性の低い日常に甘んじている高齢者は多いはずだ。趣味の世界でもディグして、経済を回す一助になるのも悪くないはずだが、いかがなものか。

 


   

         
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