0267 香港さん、イギリスさん、いらっしゃい(2020.03.29.

台風くずれの低気圧がもたらす雨のせいか、体調がすぐれない。頭が重くて思うように動けないことに加え、ちょっと急ぎ足で歩いただけで動悸が酷いことになっている。狭心症などというものは病気ではないと言う人もいるくらいに、生活改善でコントロールしなければいけないものだろうが、自粛生活が長引いてろくに運動もできないし、何だかシンドイことになってきた。先行きが見えない不安も重くのしかかってきており、メンタルを病まないようにしないと、コロナに罹らなくても命取りになりそうだ。循環器系の不具合を抱える身としては、罹ってしまったら致命的だろうから、本当に慎重に行動している。この期に及んでマスクをしていない人間が近くに来ると、逃げるようにすらしている。全くもって難儀な世の中だ。

 

気分が晴れない中、カラダに負荷をかけないように作業をしていたら、香港からメッセージが飛び込んできた。昨今は学生のデモの情報もほとんど目にすることがなくなっているが、少しは状況が改善されているのだろうか。コロナの原因も含め、今の中華人民共和国の在り方については腹立たしいことばかりだが、自分が何かできるわけでもない。せめて、香港の住民には優しくしておこうという程度か。メッセージの内容は雑誌の掲載依頼だった。香港人にとって、東京の清澄白河はやはり人気の観光スポットということで、何だか意外な気もした。

 

おおよその説明と写真を提供したところ、コーヒーについても教えろという。「うちはコーヒー屋ではない」と言いたいところだが、細かいことを説明しても時間の無駄であることは明白だ。体調がよければもう少し丁寧に応対できるだろうが、今現在の自分にはこれが限界だ。70年以上も続く老舗から仕入れているシティ・ローストが、酸味がなく自分の好みなんだとだけ伝えてある。昭和の喫茶店文化を知る年代には喜ばれる味だが、若い方たちには物足りないかもしれない。それでも自分の舌で納得がいったものしか提供したくないので、特段問題とも思っていない。ウチはコーヒー屋ではない。

 

そんなやり取りをしている最中に、片手でFacebookを眺めていたら、自分の写真が出てきて、えらくビックリした。コーヒーを噴き出しそうになりながら急いで確認すると、英国の音楽専門メディアAttack Magazineの記事だった。数カ月前に確かにいらっしゃったことは憶えているが、コロナのせいで随分昔のことのように感じてしまう。すっかり忘れていたが、5月ごろ記事になると言われていた。確かにもう5月、そう、5月ももう後半なのだ。コロナのバタバタで時間の感覚まで狂わされている。困ったものだ。

 

さて、格調高いイギリス英語で書かれた記事を読むと、オーディオ・テクニカの東京本社などを含む東京紀行的な記事で、なかなか楽しい内容である。最後のセンテンスが我がジンジャー・ドット・ドーキョー来訪記になっており、かなりインプレッシヴだったことが伺える内容だ。確かにジョー・ジャクソンやクラフトワークを一緒に聴いたし、ドゥービー・ブラザーズの「ホワット・ア・フール・ビリーヴス」も7インチ盤でお楽しみいただいた。記事を書いているジェントルマン、デイヴ氏は昭和のジャズ喫茶に関する知識がおありのようで、現代に受け継がれているアナログを楽しむ文化のサンプルとしてご紹介いただいている。いまだに数多あるジャズ喫茶を傍目に、ウチのような店をご紹介いただけるとは、ありがたや、ありがたや。

 

不思議なことに、ジンジャーは外国人のお客様が多いのである。清澄白河はそれなりの観光スポットになっているのは確かだが、わざわざ日本観光の貴重なお時間を割いてご来店いただけるかと思うと、恐縮千万である。面白いことに、フランスやオーストリアといったヨーロッパからのお客様と台湾のお客様がほとんどだ。恐らく口コミサイトなどで紹介されているのだろう。明らかにウチのポーク・ジンジャーを求めていらっしゃる。日本人にすら「見つけにくい」と言われる隠れ家カフェなのに、よくぞいらっしゃいましたと言いたくなるではないか。これからはイギリスか、香港か、いらっしゃい、いらっしゃい、大歓迎だ。

 

ビックリしてシェアなどしていたら、少し気分が晴れた。体調もわずかだがよくなったような気がする。有り難いことだ。ただ、ポスト・コロナのことを考えると、インバウンドの観光客は激減していることだろうし、国境をまたいでの旅行が以前ほどお気楽にできるものでなくなってしまったことは確かだろう。基本はご近所さん、ご近所のビジネスマンのランチが売上の大半の店なので、外国人観光客をあてにしているわけではないが、やはり有り難いではないか。昨今の状況が恨めしくていけない。これまで、台湾の村上春樹好き女子や、レコード好きのヨーロッパのお父さんたちが情報発信してくれていることは確認している。大事にしたいネットワークだが、ポスト・コロナの在り方について、さらにしっかり考えてみないことには、途方に暮れるばかりか怒りがこみ上げてきていけない。

 


   

         
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