0268 背中を押してくれるもの(2020.05.24.

営業自粛が始まった4月は、まだ精神的な余裕があったのか、いろいろやりたいことを片付けていくことができた。本来なら店に遊びに来て欲しいからやらないと言っていた通販サイトも立ち上げ、精力的に入力をすることもできた。ゴールデンウィークのころには自粛延長の気配を感じ取り、「5月末までくらいなら」と覚悟もできていた。それが給付金の申請なども済ませ、売上が全然ないのにスタッフへの給料を支払った頃、すなわちいよいよカネがないなということを感じ始めた頃から段々作業が捗らなくなってきた。

 

ニュースなどを見ると、今後はこうあるべきということが伝えられているが、そのまま実践すると思い切り売上を減らすことになる。勝手なことを言いやがってと思うが、政治家や医者などに飲食の現場など分かるはずもない。これでは近い将来立ち行かなくなることは明白だと思い始めたら、さすがにシンドくもなった。もっともっと厳しい状況に置かれている人が大勢いることは分かっている。まだ普通に1日3食満足に食べられるだけましと思い、なんとか雑務に専念しようとするが、これがなかなかできることではない。まいった、まいった。

 

とにかくSNSを見ると気分が悪くなる書きこみばかり目につくので、最近は見ないようにしている。自分自身はNoteで書いた文章のアップロード告知と、通販サイトの新着情報を載せるだけにしている。他人様はどうか知らないが、自分の場合は常にアウトプットは止めるべきでないのだ。一方でインプットは止めるべき時は止めたほうがよいこともある。前向きになれる要素が少しでもあれば貪欲に情報収集するが、気分的に落ち込むことしかなければ、シャットアウトしたほうがよさそうだ。また咀嚼する時間が欲しいということもある。一定の知り合いの新規の書きこみを流し読みし、必要であれば「いいね」するという最小限のインプットに絞ってみた。結果はやや良好と言ったところだ。

 

SNSではなく、クリエーターが発信しているNoteの方がこんなときは向いているのだろうか。自分自身は一日一本以上のペースで2000文字程度の文章を書いているが、せっかくなので、写真も何枚か掲載するようにしている。PCのデータを整理・バックアップして、膨大なフォト・データを時系列に並べる作業などをやっている中で、お気に入りの写真が何枚か見つかったので、そういったものを紹介することも兼ねて発信しているのだ。Facebookの「いいね」と同様、「スキ」というボタンがある。数は多くないが、「スキ」してくれた方の記事は見に行き、気に入れば「スキ」を押す。結局双方向性は持っている。SNS的な側面もあるとはいえ、内容がかなりまともだ。

 

他のところでも書いたが、過去のデータの整理をすることは「これまでよく頑張ってきたな」と思えるので、前向きの精神状態になれるのだ。こういった情報を共有したからといって、誰もが同じように思うわけではなかろう。過去の情報から蘇ってくる当時の精神状態がいかなるものかは人それぞれ、楽しかった思い出しかない人間にとっては辛くなる作業かもしれない。ただし、多くの方は東日本大震災や熊本大地震をまだしっかり記憶しているので、自分と同じように感じる方も多いのではとも思う。

 

あの薄暗さの中、一瞬にして世界が変わってしまったことのショックや、「日本がぶっ壊れた」と思う程の巨大な不安を抱えた日々の記憶は、決して忘れてはいけないことだと思う。また政権の混乱はあの時も酷かった。この部分は思い出したくもないが、反省材料としての記憶は、整理して保管しておくに越したことはない。完全復興はまだまだ先だろうが、日本はあの混乱から再起してきたのだ。反面教師的希望の種だ。

 

自分はその時期にカラダを壊したので、不安や焦燥も大きかったが、家や仕事を失った人たちが周囲に大勢いたので、辛い顔をすることすら憚られた。思うように動けない中、結局音楽を聴くことで救われた気持ちになったことも数えきれないほどある。ブルース・スプリングスティーン「闇に吠える街 Darkness On The Edge Of Town」のボックスセットと未発表曲集をあの当時のBGMのように記憶している。またブルースは1982年頃からうつ病の治療をしながら活動していたということが知れ、あのパワフルな歌声の裏で相当シンドイ思いをしていたことを考えると一層元気づけられもした。前に進めない状況が続く中、日々少しでも前進しようともがいていた自分の背中を押してくれていた。

 

また、当時は職場の若手職員とやっていた英会話の勉強会で、アメリカのバラク・オバマ大統領のスピーチに関してディスカッションする機会が何度もあった。世界中に分断を撒き散らしたトランプ大統領と違い、オバマ大統領の言葉は人々に希望を与えるものが多かった。スピーチ・ライティングのテクニカルな面で注目されてもいたが、自分はやはりその中身に元気づけられていた。

 

記憶の整理というお気楽な作業の中で、自分が前向きになれる種を拾い集めているような日々、結局ろくに結果は出せていないが、立ち止まって考えることも必要と思えば、少しは気分が楽になる。さて、今日もまた小さな一歩を踏み出すとするか。まずは背中を押してくれるBGMを探すところから始めよう。

 


   

         
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