0270 ルーツ・ロック探求中(2020.06.08.

「ルーツ・ロック」のイベント開催日を確定し、宣伝を始めた。本来4月に開催予定だったものだが、コロナのせいで2か月ずれ込んだ。取っ掛かりは「カントリー・ロック」のイベントをやろうということでお客様と盛り上がっていたことにある。いろいろ準備していくうちに、「アメリカーナ」という言葉と「ルーツ・ロック」という言葉が「カントリー・ロック」とは似て非なるものであることが分ってきて、しっかり使い分けるとどうも自分が好きなのはルーツ・ロックということになりそうだ。しかし、Wikipediaでみると、ルーツ・ロックは意外に狭い。やはりイベントでは、「アメリカーナ」や「カントリー・ロック」もまじえた「ルーツ・ロック」とその周辺領域を扱うこととしよう。

 

カントリー・ロックは「元々は、1960年代から1970年代のロック・アーティストがカントリー・ミュージック、フォーク、ブルーグラスなどの要素を導入した作品群から発生した」と、起源が固定的に示されることが面白い。アメリカーナはアメリカのルーツ・ロックと言いながらも、外部との(文化的)融合から生じた「アメリカの音楽の混ぜ合わせ」とされる。翻訳臭プンプンの文章に違和感はあるが、間違ってはいないだろう。

 

ただ、ルーツ・ロックと言うからにはルーツがあるわけで、キーマンを設定してそこからどう派生・展開し、現在に至っているかを明らかにしたら面白いではないか。そんなことを考えながらあれこれ聴いていたが、いやはや意外に難しい。カントリー・ミュージックを隈なく聴いているわけでもないので、カントリー・ロック寄りの部分は余計に語り難い。むしろフォークやブルースに根差したロックの現在形が自分の好みに最も近いし、普段からよく聴いているもののようだ。Wikipediaの「ルーツ・ロック」のページでは、ボブ・ディラン、ザ・バンド、CCR、スティーヴ・アール、サン・ヴォルト、ウィルコが「主なアーティスト」として具体的に例示されてる。なるほど、といったメンツだ。ただし、ボブ・ディランは3つとも主なアーティストとして紹介されている。「起点にせよ」と言われているようなものだ。

 

ボブ・ディランやザ・バンドの音楽は基本的にルーツ系ではあろう。ただ時期によって随分違ったこともやっているので、ある程度限定した方が面白い。地下室に拘る気もないが、ローリング・サンダー・レヴューも結局はルーツ志向だし、「ラスト・ワルツ」に集結している連中を分類しながらやっていくのも面白そうだ。しかし、語呂がいいので、「ルーツ・ロックの現在」というタイトルにしてしまったので、70年代に終始してはいられない。漠然とした起点がその辺にあると考える程度にするべきだろう。自分の中では、レオン・ラッセルやライ・クーダーといったアーティストも後々まで影響力があったように思うし、カントリー・ロック寄りでは、アンクル・テュペロを始点とするオルタナ・カントリーに関しても語らないわけにはいかない。ウィルコ、サン・ヴォルトはルーツ・ロックの重要アーティストだ。

 

一方でニュー・オリンズも外せない。アラン・トゥーサンからジョー・ヘンリーへの繋がりも紹介したいが、プロフェッサー・ロングヘアが個人的には比重が大きい。ドクター・ジョンも触れないわけにはいかないか。現在形ではジョン・クリアリーやスタントン・ムーアといった絶対不可欠のアーティストがいるので、どうつなげるかだ。メデスキー・マーティン&ウッドとジョン・スコフィールドが合流した「ア・ゴー・ゴー」から以降の、ジャムバンド的な展開も外せない。MMWやソウライヴ、ガヴァメント・ミュールといった連中とジャムっている輩はすべて要注意なのである。

 

テキサスもZZ Topを語るかどうかは別として、スティーヴィー・レイ・ヴォーンから以降、ドイル・ブラムホールIIとチャーリー・セクストンのアークエンジェルスもマスト・アイテムだろう。そうなるとここで、現在のボブ・ディランに還流する。面白いではないか。ボブ・ディランの原点としてもフォークを意識すると、ウディ・ガスリーやピート・シーガーまで遡ることになる。そうなれば、「ザ・シーガー・セッションズ」もあるブルース・スプリングスティーンも意識しないわけにはいかない。

 

本来「音都」と言えば、ナッシュヴィルやメンフィスだろう。そこらをディグしはじめたら1回では終わらない。スタジオごとに紹介したいし、スタジオ・ミュージシャンも体系立てて紹介したいではないか。今後の課題としたいが、やはりマッスル・ショールズ系やロイヤル、エリアコード615、ディキシー・フライヤーあたりは触れないわけにはいかない。代表してディキシー・フライヤーのジム・ディッキンソンを取り上げるとすれば、ノース・ミシシッピー・オールスターズの息子たちに繋がる。そこからはサマンサ・フィッシュやアンダース・オズボーンにもつなげられるという算段だ。いかがなものだろうか。

 

意外なところで、英国人の憧憬的なブルース寄りのアメリカーナ・ルーツ系というものもあるではないか。エリック・クラプトンはデラニー&ボニーやジム・ディッキンソンとも繋がるし、ダイアー・ストレイツ解散後のマーク・ノップラーがやっていることは典型的なルーツ・ロックであり、アメリカーナである。そういえば、ノッティング・ヒルビリーズなどという渋いユニットもあったな。やれ、ジャズとカントリーの融合的なノラ・ジョーンズ周辺や、メキシコ国境に近いライ・クーダーやデヴィッド・リンドレーも語りたいと言えば語りたい。ダン・ペン、ドン・ニックスにもうまく繋げたいが、さてさてどうしたものか…。ソニー・ランドレスも語りたいな…。ホット・クラブ・オブ・カウタウンも語りたいな…。パンチ・ブラザーズもあるな…。きりないな…。

 


   

         
 Links : GINGER.TOKYO  saramawashi.com  Facebook  
 Mail to :  takayama@saramawashi.com     
 Sorry, it's Japanese Sight & All Rights Reserved.